人の見のこしたものを見るようにせよ。

すべての道は地理に通ず。

【ウイスキー1周年特集<中編>「ブレンデッド」の「家飲み」から広がる世界

いよいよウイスキー特集の本体部分。
「序」と「前編」を読んでいない方は、こちらからどうぞ。

【ウイスキー1周年特集<序>】日本酒ファンの自分がウイスキーを飲み始めた理由 - 人の見のこしたものを見るようにせよ。
【ウイスキー1周年特集<前編>】 次々に覚醒する「アクワイアード・テイスト」 - 人の見のこしたものを見るようにせよ。

ここ3ヶ月くらい、ブレンデッドスコッチをコツコツと飲んできて、当初の想像以上にそれぞれ個性があることが分かって来た。
そして、その個性の延長線上には、「趣味酒」であるシングルモルトや、他のウイスキーのへの道筋が見える(ような気がする)。

つまり、ブレンデッドスコッチは、前編で書いた「日常性」という価値だけではなく、「ウイスキー趣味の入口」としても価値を持つのではないかと感じでいる。
そこで、誰もが入手容易なブレンデッドスコッチについて、初級者なりのレビューを書いてみようと思う。

対象とするウイスキーは以下の通り。

  1. 自宅近所のスーパー又はコンビニで購入可能
  2. 容量700ml換算で実売1000円前後
  3. スコッチ又はスコッチタイプのジャパニーズウイスキー


そして、コツコツ買い集めた。
(最近酒置き場が不足しているので、小瓶が売っているものはそれで我慢した。。。)
ドン!!!

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※この写真を撮った後に「キリンオークマスター樽薫る」を追加

なお、レビューの中の「日本酒で例える」という項目は完全にお遊びなので、興味がない人は読み飛ばしてくださいませ。
(でも、考えていて一番楽しかったのはこれだったりするので、読んで笑ってくれると嬉しい。)


目次

■デュワーズ ホワイトラベル

味わい二言特徴:スムーズ&メロウ
日本酒で例える:立山・本醸造

好み度:★★★★★(星は五点満点)

全ての要素が平均点のようなバランス型のウイスキー。
「アメリカで最も飲まれているスコッチ」というだけあって非常に分かりやすい。
とは言え単に薄いな訳ではなく、ハイボールで飲んでみると、泡とともに潜んでいたフルーティー、スモーキー、ウッディなどの要素が浮上して来て最高にうまい。

趣味酒度:★★★

この良い意味で「サイレント」な感じは、バリバリ趣味全開という訳ではない。
だが、デュワーズのスムーズさは、アイリッシュウイスキー、例えば「ブッシュミルズ」や「タラモアデュー」あたりに通じるものを感じる。あと、メロウな感じはバーボンっぽさも感じる。
個性的なシングルモルトの入口になるかは微妙だが、違う方面からウイスキー趣味に展開する可能性は十分にあると思う。

■ジョニーウォーカー レッドラベル

味わい二言特徴:ウッディ&スパイシー
日本酒で例える:大七・生もと本醸造

好み度:★★★★

今回のラインナップで最も色が濃い方で、それに比例するウイスキーらしさ、そして熟成感がきちんとある。
最後に潮っぽいスパイシーさがあって、単なる優等生で終わらないところも非常に良い。
これをストレートでチビチビやっていると、安ウイスキーにも関わらずとても気分が良くなる。

趣味酒度:★★★★★

バランスと個性を高いレベルで両立している「ジョニ赤」は、様々なウイスキーへの取っ掛りになり得ると思う。
同じ銘柄でランクを上げて「ジョニ黒」を飲んでみても楽しいし、バランス型かつ適度にスモーキーなシングルモルト「ハイランドパーク」とかに進んでみるのもアリだろうか。

■ホワイトホース ファインオールド

ホワイトホース ファインオールド 700ml

ホワイトホース ファインオールド 700ml

味わい二言特徴:マイルド&ソルティ
日本酒で例える:高清水・本醸造

好み度:★★

香りは海藻+スモークを感じるが、味は蜜のような甘さがあってマイルド。
シンプルで分かりやすく、クセがあまり無い。というか、輪郭がボヤけているように感じる。
飲み方はどれでもそこそこという感じ。ストレートやロックだと甘さが勝って、ハイボールだとスモーキーフレーバーが少し強調される。

趣味酒度:★★

ホワイトホースといえば、有名なアイラ島のシングルモルト「ラガヴーリン」を使用していることで知られている。
が、実際に飲んでみると、ラガヴーリンの個性である「ピート+潮=正露丸風味」と、それを包み込むリッチなフレーバーは微塵も感じられない。
かと言って、他の味わいのベクトルも中途半端で、趣味酒としての次の展開が思い浮かばない。

■ティーチャーズ ハイランドクリーム

味わい二言特徴:フレッシュ&スモーキー
日本酒で例える:一ノ蔵・無鑑査本醸造辛口

好み度:★★★

香りは煙りっぽい。味はほどほどのコクと青りんごっぽい酸味があって、全体的にサッパリしている。
ハイボールにするとスモーキーさが良い感じに広がって良いし、ストレートもクリーミーな感じで悪くない。

趣味酒度:★★★★

これが好きだという人は、スモーキーフレーバーへの耐性がかなりあると思う。
アイラ島のシングルモルトの中でもバランスが良い「ボウモア」とか、スモーキーでもあまり潮っぽくない「レダイグ」とかを奨めたい。

■ベル オリジナル

ベル オリジナル 700ml

ベル オリジナル 700ml

味わい二言特徴:マイルド&ヘビー
日本酒で例える:黒松剣菱

好み度:★★★★★

ブレンデッドなので目立った角は無いものの、しっかりとしたピートと、熟成による複雑な味わいを秘めており、今回のラインナップで最も「重たい」と感じる。
さすがは「イギリスで最も売れているウイスキー」というだけのことはある。
ロックで氷を溶かしながらじっくりと楽しみたい。

趣味酒度:★★★★★

ベルが飲める人は、ウイスキーの味わいに対する許容度が高いと思う。
基本的にどのベクトルに向かっても良いと思うし、いきなり超個性的な「アードベッグ」とかを気に入ってしまうかもしれない。

■カティーサーク オリジナル

カティサーク オリジナル 700ml

カティサーク オリジナル 700ml

味わい二言特徴:ライト&フルーティー
日本酒で例える:開運・特別本醸造

好み度:★★★

シェリー樽に由来するレーズンのような香りと、蜜のような甘さが中心で、他の要素は弱い。
クセがほとんど無く、とても分かりやすいので人に奨めやすい。
好きな飲み方はストレートだが、濃い目のハイボールにすると甘やかで優しい香りが立ち、それはそれで悪くない。

趣味酒度:★★★★

フルーティーな香りというのは、スコッチの個性として欠かせない要素だと思う。
このカティーサークは、フルーティーな香りの中でも「シェリー樽」に由来する干しブドウのような風味が明確に感じられる。
このシェリーの香りは、キーモルトである「マッカラン」に由来しているので、素直にこの方面に進んで行けば楽しめるだろうか。

■バランタイン ファイネスト

味わい二言特徴:リッチ&コンプレックス
日本酒で例える:菊姫・菊

好み度:★★★★★

今回の水平飲み比べで最も見直したのはコイツかもしれない。
シェリーっぽい華やかさ、コーヒーのようなほろ苦さ、控え目なスモーキーフレーバー、樽由来のバニラ風味など、味の要素が非常に多いが、それらが奇跡的にまとまっている。
世間ではハイボールが奨められているが、個人的には割るのは勿体なくて、トゥワイスアップかロックが好みだ。

趣味酒度:★★★★★

今回のラインナップで最も「複雑」であるが、これは決して分かりやすい個性ではなく、趣味酒度は非常に高いと思う。
但し、経験値不足の自分には、これと同類の個性を持つウイスキーが思い浮かばない。
少しだけ高額の「バランタイン12年」も飲んだことがあるが、よりマイルドで万人受け寄りの印象がある。
もっと上級の「17年」や「21年」を飲んだら、何か見えてくるものがあるのだろうか?

■サントリー 角瓶

サントリー ウイスキー 角瓶 700ml

サントリー ウイスキー 角瓶 700ml

味わい二言特徴:スイート&ケミカル
日本酒で例える:月桂冠・月

好み度:★

「トリス」や「レッド」ほどではないが、サントリーの安ウイスキーに共通の「ケミカル&スイート」な感じがする。
そして、全く広がらない人工的な香りと、甘ったるい味わいが「分離」して感じられる。
長年にわたって売れ続けてているというのは、市場の要請に応えた優れた酒質設計の賜物であり、そこは素直に尊敬すべきだと思う。
だがしかし、自分は非常に苦手だ。

趣味酒度:★

明らかに独自の味わいなので、ここからウイスキー趣味への発展性があるとは思えない。
まあ、角瓶は「これでいい」系日常ウイスキーの代表なので、趣味の入口になる必要もないのだろうが。。。

■ブラックニッカ リッチブレンド

ブラックニッカ リッチブレンド 瓶 700ml

ブラックニッカ リッチブレンド 瓶 700ml

味わい二言特徴:ラウンド&スイート
日本酒で例える:真澄・特撰

好み度:★★★

濃厚な甘味と適度な華やかさがあって、ほんの僅かにスモーキーでバランスが良い。
厚みや複雑さはないが、ウイスキーらしく香りが広がるという点では「リッチ」と言える。
ストレート、水割り、ロックは甘味が中心だが、ハイボールはフルーティーかつスモーキーさが出て来て非常に良い。

趣味酒度:★★★

誤解を恐れずに言えば、この「ブラックニッカリッチブレンド」の香味のバランスは、今回のラインナップの中で、スモーキーでないシングルモルトの標準に近いのではないかと思う。
なので、これを基準として「スペイサイド」や「ハイランド」等のシングルモルトを色々と飲み比べれば、熟成年数や価格によるスケールの違いがわかるかもしれない。

■キリン オークマスター樽薫る

キリン オークマスター樽薫る 640ml

キリン オークマスター樽薫る 640ml

味わい二言特徴:ウッディ&ドライ
日本酒で例える:菊正宗・本醸造樽酒

好み度:★★★

これは原料が「モルト、グレーン」なのでスコッチタイプのなだが、味わいは明らかにバーボンに近い(実際バーボン樽をメインで使用している)。
口に含むと樽由来のバナナ~バニラの香りが広がるが、すぐにアルコールの辛さで収束していく。
単体で飲むとインパクトは無いが、他と比べると独特の個性がある。
飲み方はメーカーが奨める通り、ハイボールが良いだろう、
(なお、瓶やラベルなどの「見た目」は、今回のラインナップで最下位だ思う。売る気あるのか?)

趣味酒度:★★

自分はこれの上位製品である「富士山麓」が、ウイスキーを語る上で欠かせない「樽」に興味を持つきっかけとなった。
この「オークマスター」も「樽」への興味や関心への入口となる可能性は十分にあると思うが、ウイスキーの王道である「シングルモルト」への道筋はあまり見えないと思う。

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最後の締めとして、識者の含蓄あふれるコメントを紹介しよう。

うるせー!!!
分かっとるわ!!!
アンタの言うことが正しい!!!
自分がやってきたことは「ザ・徒労」や!!!
ワハハハ!!!

確かに趣味の先人の教えは尊いし、結果的に9割以上はその通りだと思うのですよ。
でもね、それを頭でなぞって、理解することの何が楽しいのだろうか?
なんだか、ミシュランの星つき観光地や世界遺産だけを巡る旅行みたいな感じか?
そんなふうに、他人の価値基準に乗っかるものを「趣味」と言えるのか?

こういう疑問を持つ自分は、さっきの有識者のツイートを読んで「安くて不味いウイスキー」をすっ飛ばす人ではなく、「安いウイスキーは本当に不味いのか?」「その中にいいウイスキーの味があるのか?」を自分で体験して確かめる人でありたい。
そういう思いで、頑張ってこの記事を書いたのですよ。

そしてオーラスにもう一つ書いておきたいことがある。
このブログをかなり書き進めた段階で、友人congiro氏が、3年前に同じ趣旨の記事を書いていたことを知った。
企画内容が同じというだけではなく、高評価のウイスキーまでほぼ一致している。。。
congiro.hatenablog.com

自分の名誉のために書いておくが、断じてパクリではないぞ!!!

<続>