人の見のこしたものを見るようにせよ。

すべての道は地理に通ず。

さけにっき(平成31年3月7日)

今週は仕事も家庭もそれほど多忙ではなく、かと言って飲みに行ったり家でガッツり飲む訳でもなく、平々凡々に過ごしております。

せっかくなので正調粕取エントリの続きを書き始めたものの、下書きの分量が徒に増えるだけで一向にまとまる気配が無く。。。

 

そんな木曜日のこと、酒関係でちょっと気になる記事を発見。

 

チームラボの猪子寿之氏と、日本酒のプロである千葉麻里絵氏の対談っつーことで、楽しく読んだ。

デジタルにもアートにも疎いわっしー氏は、猪子のことを良く存じ上げませんが、このおっちゃん(お兄さん?)は酒的になかなか面白いことを言ってるなーと。

 

一ヶ所目。

猪子 僕がさっき言ってた新興の日本酒は温めた方が美味しいのかな?

千葉 それは物によるんです。ただ口の中でふわ〜ってくるのはどの日本酒にもあります。そもそも世界中を探してもお燗にしてお酒を出すっていう文化自体が日本酒しかないんです。

猪子 そんなことないと思うよ! 紹興酒も温めるじゃん。日本の人はみんな「日本だけ」って言うの好きだけど、世界に日本だけのものなんてないよ!

千葉 え〜! お燗は日本だけだと思ってました。紹興酒もホットワインもあるけど、それは体を温めるとかそういう役割だけだと思ってました。

猪子 いや、紹興酒はすごい味が変わるよ。冷たいとなんか鼻に付くんだけど、温めると鼻に付く感じが消える気がする。

千葉 紹興酒にはお燗番っているんですかね? それを専門にする人で、ただ温めるというよりは調理するっていうイメージですね。酸っぱくするためとか、甘みを出すためとか。そういう文化は見たことないなって思って。

猪子 いや〜、紹興酒にそれがあるかはわからないけど。ちゃんとやってるんじゃないかな(笑)。別に日本の食文化が平均して特別レベル高いって思わないし。

 

己が直感で突き進む猪子氏を、日本酒サイドの千葉氏が理屈で説き伏せようとするも、両者折り合わずみたいな感じで楽しい。

 

猪子氏の「世界に日本だけのものなんてないよ!」って言うのは素晴らしいですね。

実際に唯一性とか独自性があるかっつーことよりも、それを「アピールすることの意味」について考えさせられる。

日本酒に限らず「日本だけ!」「日本凄い!」というアピールは、一見すると外向きのアピールでありながら、これが心に響くのは主に日本人であって、海外の人は白ける(それどころか気を悪くしかねない)のではないか。

 

日本酒に関しても、こんなマスターベーションみたいなアピールをするよりも、「日本酒も紹興酒も温めて飲む仲間でしょ!」とか、「日本酒の製造方法っては中国の影響を受けているよね!(麹とか段掛けとか)」とか言う方が、日本酒へのインターナショナな理解が進んで、輸出が増えたりするんじゃないですかねー。知らんけど。

 

二ヶ所目。

千葉 あまり必要じゃないですか? 味覚って、体験があれば覚えてると思うのですが、そうじゃないとなかなか記憶に残らないと思っていて。猪子さんは逆にどこまで介入したいとかありますか?

猪子 いやー。味には介入したくないかな。

千葉 やっぱり、そうなんですね! SAGAYAを見てそんな気はしてたんですけど。

猪子 だって、例えば味がスパークするからって、周りがスパークするよりも、味がスパークして本当に美味しいんだったら、僕はそのスパークした味を良い景色で食べたいかな。スパークだなんだって説明されるのは鬱陶しいからね。

———体験を純粋に楽しみたいってことですね?
猪子 説明することは快楽を上げるわけではなくて、満足度を上げることだよね。

千葉 安心感とか。

猪子 そうそう。キーワード的に「美味しいぞ」っていう満足度を上げるかもしれないけど、それは快楽を上げる行為じゃない。だったら、仮にすごい美味しいものを食べさせてもらったときに、美味しいものの説明が広がるより、美味しいものを一番好きな景色の中で食べた方がいいと思う。

千葉 たしかに、味がスパークするから周りもスパークするっていうのは安易かもしれないですね。

猪子 安易だし、そんなにエクスタシーなことじゃないよ。

 

ここも、両者が噛み合っていなくてエキサイティングな部分。

自分は常々、「(最近の)日本酒は説明的過ぎるよなー。説明的にアプローチできるところが日本酒の魅力であり、限界でもあるような気がするんだが、どうなんだろうなー。」と思っている。

なので、「説明することは快楽を上げるわけではなくて、満足度を上げることだよね。」という言葉はかなり心に刺さった。

 

説明によって得られる知的興奮もエクスタシーの一種かもしれんが、それを得られるのは熟練者に限られるし、説明する側が主役になってしまう嫌いがあるので、個人的にはあまりそこに光を当てたくない。

エクスタシーという観点では、日本酒は他の酒に比べるとかなり劣勢だと思っているので、そこをどうクリアしていくかっつーのは考えていきたいテーマではある。

(参考:過去の類似記事)純米酒で“chill“出来ますか? - 人の見のこしたものを見るようにせよ。

 

何はともあれ、外からの視点は新鮮でエキサイティングやなーと思う次第でございます。

<了>