人の見のこしたものを見るようにせよ。

すべての道は地理に通ず。

「アメリカで 日本酒ぜんぜん 流行ってない【今日の一句】」を読んで。

日本酒関連で興味深い文章を読んだので、その感想をテキトーに書く。

一年前に書かれた記事らしいが、それがTwitterで再燃して自分のところに回ってきた模様。

本文はこちら↓

 

以下の文章は主観1000000%、根拠0%のただの放談なので、そのつもりでお読みくださいませ。

 

◼️酒業界の片隅に「王様は裸じゃないか?!」と言える大人がいる。

まず、問題提起そのものが素晴らしい。

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日本にいたとき、いま日本酒は海外にどんどん進出しているぞ、というような話を聞いていたけれど、10ヵ月ほどこの地で暮らしながら、なんかもしかして別に日本酒って流行ってないんじゃないか、と思っていた。

自分のような素人ではなく、現役で酒関係の仕事をしている方が、誰にでも意味を理解できる根本的な疑問を投げかける。

しかも、現場(アメリカ)から問いかける。

評論家ではなく、当事者であるところが痛快ですね。

 

◼️中間部分はアメリカの日本酒事情が垣間見られて興味深い。

この記事の本論部分は第三者の話が中心で、独自データなどを用いて客観的に論を組み立ててるわけではない(筆者の方、ごめんないさい)。

とは言え、トピックとして面白い話題がたくさん並んでいて、色々と考えさせられる。

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たとえば、アメリカに自蔵の商品を広めようとして、「◯◯貿易」と名前のつく大手食品輸入会社のリストに載るようこぎつけたとしても、Distributor(現地の顧客と結びつけてくれる卸売業)がそれを販売店や飲食店に置く、というところまでたどり着けるとは限らない。

輸出の労力に見合った対価を得るのは、並大抵のことではないんやろな。。。

我々日本人は、日本酒を世界に広めるプロセスとして、ついつい「本場である日本産の日本酒を輸出する」ことを王道として捉えがちだが、もう少し柔軟になって良いんじゃないかなー。

例えば、ワインやビールがこんなに世界中に広まったのは、本場から輸出されたからではなくて、世界各地で現地醸造されるようになったという点が大きいだろう。

だから、日本酒に関しても、近年増加しつつあるアメリカ人による小規模醸造(自家醸造を含む)を戦略的にバックアップすることが効果的なのではと思う。

日本酒のDIY自家醸造ハンドブックとか、ウェブサイトとかを作って、全米にばらまいたらエエんちゃうかなー?

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ちなみに、これはわたし個人の体験だけれど、たとえ売り場をキープできたとしても、日本酒のクオリティをきちんと保ってくれる酒販店はとても少ない。Bevmo!やNijiya、Bristol Farmで購入した地酒は、ほぼほぼ老ねていた。

これはずっと言われ続けている課題だが、一向に改善されな気配がない。

いっそのこと、常温放置しても問題ない酒質の商品(完全発酵系、酸化熟成系など)を意図的に市場投入しても面白いんじゃないかなー。

アメリカで売れるかは知らんけど、酒精強化ワインとか紹興酒とか、酸化熟成(老ねの一種)の風味を取り込み、魅力にしてしまっているジャンルは結構ある。

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その女性は、「自蔵の日本酒の魅力を30秒でアピールできるようにならなければならない」とおっしゃった。

某氏の「秒速で1億」みたいな煽りの感じもあって、素晴らしい言い回しですなー。

名言として世間に広めたい。

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たとえば日本人の中には、「アメリカ人はあんこが苦手なんでしょう」と思っている人は多い。

ところがいま、ロサンゼルスにあるとある今川焼き屋では、アメリカ人が長蛇の列を作る。

へー。そうなんか。と思ってググってみたら、むっちゃ興味深かった。

名前は今川焼きであっても、中身はもはや今川焼きではない。

ローカライズの素晴らしいお手本。

ビバリーヒルスの今川焼きショップ「フリフィルド」登場!

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(あとは、「日本酒のボトルってダサいよね」問題もある。長くなってしまうので、これについては、また別の記事で書きます……

誰が、どのようなタイプのラベルを見て、「ダサい」と評しているのだろうか。

個人的には、アメリカでは中途半端にデザインするよりも、ベタな毛筆漢字書きのラベルとかが意外とウケそうだと想像しているのだが、実際はどうなんやろ。。。

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企業向けのイベントで、複数の日本酒のブースが並んでいたときに、隣のブースのお酒と比べて自分のお酒はこれが素晴らしいですよ、とアピールするときに、わたしたちが胸を打たれる物語って、いったいなんなのだろうか。

アメリカ産のワイン、ウイスキー、ビールなどを飲み、他の産地のものと比べた感じだと、アメリカ人は「わかりやすさ」とか「明快さ」を好むんだろうなーという気がする。

そんな酒を好むアメリカ人にとっては、作り手側の「物語」など不要なのかもしれない。

というか、例えば以下のクラフトビールの記事とかを読んでいると、アメリカ人のアーリーアダプター層は自分の物語(ライフスタイルや価値観)を中心に、消費行動を取っているという印象がある。

クラフトビールが世界中で支持される理由|フード&レストラン|GQ JAPAN

だから、蔵や製品の物語を一方的にアピールするというよりは、それをライフスタイルに取り入れてもらえるようにプレゼンテーションするのが効果的なんかなー。知らんけど。

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なお、このあたりの北米日本酒事情については、隣国のカナダで奮闘しておられる春日井さんのツイートを読んでいたおかげで、理解が早かった気がする。

Y.Kasugai@パシリ1号(@pashiri1gou)さん | Twitter

 

◼️この記事の真価は結論部分にあるのでは。

そして、結論部分。

ここが一番ツッコミ甲斐があった。

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売り手都合の、“いまの日本酒事情”みたいな話は、飲み手にとってはぜんぜんおもしろくないし、日本酒をまずくする可能性だってあるからだ。

日本の日本酒コンテンツにはどうしても売り手視点のものが多い。

自分の感覚だと、世間には飲み手視点っぽい「日本酒のおいしい飲み方」とか、「おすすめの日本酒」とか、「日本酒を美味しく飲ませてくれるお店」とか、そういう記事が溢れているように思えるんだが。。。

そして、個人的にはそういう「TIPS」的な「答え」が書いてある記事にはあまり興味がない。

なぜなら、そういうのを自分で考えて、実験したり探索して、失敗してもそれはそれで笑って、同好の士と交流して、そういう中で自分の嗜好や表現を見つけていくのが楽しいからなー。

まあ、自分は短期間ながらプロとして日本酒に関わっていた経験があるし、そこそこ特殊なのは自覚しているので、世間一般に当てはまるかどうかは分からんけど。。。

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ある種の、スノッブな日本酒ファンは、素晴らしいお酒の素晴らしさを理解できないのはその飲み手が愚かなのだ、とでも言いたげに、難しいことを言って、日本酒の敷居を上げてゆく。

これは全く同感ですね。

素晴らしいかどうかを決めるのは飲み手しかいない。

話を難しくする人は、だいたい「正しい」とか「本物」というキーワードをつけて、酒に上下関係を設定しようとする。

市場に存在するものは全て正しくて、全て本物でしかないでしょうに。。

酒豪で鳴らした福沢諭吉先生も「天は酒の上に酒を作らず、酒の下の酒を作らず」と言ったとか、言わなかったとか。

(※諭吉先生が酒豪というのはマジです。)

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(ちなみに、「飲み手」の視点を考えた日本酒本、というので作らせていただいたのが、四谷三丁目の日本酒専門店「鎮守の森」竹口敏樹さん監修の『もっと好きになる 日本酒選びの教科書』です)

存在は知っていて興味もあるが、まだ読んだことありませぬ。

どうせなら、最近話題のペアリング本と読み比べてみようかなー。 

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わたしが惹きつけられてやまない、日本酒というお酒の、この魅力は、いったいなんなのだろう。それを言語化しなくっちゃ。

そして、アメリカの人たちがそれをおもしろいと思うのだとしたらどういうポイントにおいてなのだろう。それを言語化しなくっちゃ、と、思います。

日本語ですら魅力の言語化が難しいのに、ましてや英語だとご苦労は何百倍でしょうな。お悩みお察し申し上げます。。。

自分も素人ながらそういう問題意識を持っていて、そのために意図的に日本酒以外の酒類を幅広く飲んでいる。

そしていつか、敬愛する新橋「玉箒」のマスターのような境地に達したいと思っております(以下、ご参考まで)。

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第一弾の記事がこんな感じになってしまいましたが、以降は日本酒をおいしく飲むためのTIPSを飲み手視点で書きながら、たまーにこういう話もしていこうかな〜、と思います(長くなってしまうので割愛しましたが、聞いたお話の半分も書いていないので……)。

この記事を最初に読んだ時には、一年前の記事だと知らなかったので、「TIPSなんかかなり出尽くしていてもう食傷気味だから、このままストロングスタイルで行って欲しいなー」と思っていた。

で、一年前の記事だと気づいた後に、その後の記事を拝見すると、第一段ほどシリアスではないものの「TIPS」なんか全然書かれていなくて、アメリカで日本酒を広めていく上でのガチな悩みに根差す記事が書かれていた。

おっしゃ、やったぜ!!!

 

っつーことで、この調子で頑張ってくださいませ。

引き続き、楽しく応援しております。

<了>