人の見のこしたものを見るようにせよ。

すべての道は地理に通ず。

日本酒はどの酒と似ているのか?

きっかけはこのツイート。

この方は直接存じ上げないのですが、アメリカで日本酒を普及させるべく奮闘していらっしゃる方のようです。
海外の方を相手にしていらっしゃるということで、酒に対する「疑問の持ち方」が興味深くて、いつも楽しくツイッターやnoteを拝見しております。

以下、続きのやりとり。

そう、実は自分も、最近は「日本酒とウイスキーが似ている」と感じていて、ブログの下書きに纏まりのない思考の断片が格納されておりまして。
良い機会なので、その断片を最低限読める感じに整えて、吐き出しておきましょう。

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■日本酒と「ワイン」は似ているのか?

海外の酒の中で、日本酒と最もよく比較されるのは「ワイン」だと思う。
(自分も以前は、良く日本酒とワインを比較して物事を考えていた。)
両者が比較される大きな要因の一つは、ともに「醸造酒」であることだろう。

但し、それだけでは説明がつかない。
世界的に飲まれている醸造酒といえば「ビール」もあって、日本酒と同じく「穀物」から造るという共通点があるが、何故かあまり比較対象とされない。
(最近は日本酒とビールを比較する人が増えている気もするが。。。)

完全に想像だが、日本酒とワインが良く比較される要因は、
①製造方法に共通点がある(ともに醸造酒)
ことに加えて、
②ワインをあこがれの対象として捉えている人が多い
こともかなり大きいのではないかと思う。

で、自分はどう感じるかと言うと、実際に似ているかどうかはさておき、②の観点から比較することの意味はあるし、とても良いことだと思っている。
但し、自分自身のワインの経験値が、主に財力と肝臓の制約によって不足しており、主観に基づく独断と偏見で語れないのが悲しいところ。
(唯一「ちょっとは自分の経験に基づいて話せるかな」というのが、「日本酒の古酒・熟成酒」と「酒精強化ワイン」の共通性なのだが、双方ともマイナージャンルだし。。。)

■日本酒と「焼酎」は似ているのか?

これは言うまでもなく、ともに「和酒」であるという共通点がある。
さらに、日本酒と「米焼酎」であれば、原材料まで同じになるのでより親和性が増す。

ところが、焼酎をそれなりに飲んできて、特に米焼酎と粕取焼酎を愛してやまない自分としては、「味わいは全然似ていない」というのが正直なところ。
あえて似ている点を探せば、
・「吟醸酒」と「減圧焼酎」はエステリー(フルーツ)の感じが似ている。
・「純米酒や本醸造酒」と「常圧のそんなに熟成していない米焼酎」は、静かな感じが共通する。
とかそのくらいで、全面的に似ているとは言い難い。

そもそも自分は、日本酒と米焼酎に「お米の味や香り」をあまり感じないので、共通点が「静かな感じ(=味が弱い/無い)」というのも何か変だなと。。。
(ここを深堀りすると冗長になるので、今回は割愛する。)

ちょっと角度を変えて、「似ていると主張することによって何かが生まれそうか?」と考えても、あまり妙案が思い浮かばない。
アウトプットの味わい、アルコール度数が違うということは、飲むシチュエーション、販売のターゲットも全然違うということだからなー。。。

ということで、個人的には、日本酒と焼酎は「ただ同じ国で作られている」だけで、「実際似ていない」し「似ていると発信する意味や効果も乏しい」と思う。

■日本酒と「ウイスキー」は似ているのか?

そして、最後。
結論を言ってしまうと、現在の自分は、日本酒と一番似ている酒はウイスキーだと思っている

ウイスキーを飲むようになる前は、日本酒とウイスキーを比べるなんて1ミクロンも想像しなかったな。
こういうのは、節操なく色々な酒を飲んできた醍醐味というか、何というか。。。

最大の共通点は、日本酒もウイスキーも、味わいの淡い穀物に外部から要素を加えていく「足し算の酒」ということだと思う。

日本酒の原料は「米」で、ワインの原料のブドウと違って内部に水分をほぼ含まないので、外から水を加える。
製造工程で数多くの微生物が活動し、米と水を原料に味わいの要素を創造し、元々の米とは異なる味わいを次々に乗っけていく。

ウイスキーの原料は「大麦」で、やはり外から「水」を加える。
そして、麦芽(物によってはそれに付随してピート)の風味を与え、蒸留後の熟成段階で「樽」の風味をガツンと乗せる。

日本酒に関しては「引き算の酒」だという主張もよく聞くが、これは「精米」という一つの工程にフォーカスした「近年のモダンな日本酒」のイメージだろう。
他のの酒と比べて原材料の種類が多く、活動する微生物の種類も多く、工程も複雑な酒が、「引き算の酒」の訳はないと、自分としては思っている。

もう一つ、「地域の”文化”が表現されやすい酒」だということも、重要な共通点だろうと思う(そうあって欲しいという願望も含む)。

ワインは原料であるブドウの味わいが地域の自然条件によって大きく異なる。つまり、「地域の”自然”が表現されやすい酒」と言える。
それに対して、米は北海道産と九州産、もっと言えばカリフォルニア産と比較しても、味わいにそれほど大きな差は無い(おそらく大麦も同様だろう)。

では、日本酒とウイスキーが、それが造られる地域とどのような繋がりがあるかと言えば、それは地域の”文化”だと思う。
「そこにあるものを使って造られ始めた。」
「そこに住んでいる人が求めるものが造られてきた。」
みたいな、自然に根差しつつも、そこの人の生活や生業が乗っかってrいるイメージ。

そう言えば、ちょっと前に以下のようなツイートをしたことがある。
これは考えていてむちゃくちゃ楽しかったことをよく覚えている。


(もちろん、もっとワインに詳しくなれば、日本における日本酒の産地と、フランスにおけるワインの産地の比較もできるかもしれない。)

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以上が、下書きに溜め込まれていた内容。

改めて振り返ってみると、単純にこの時点で好き&よく飲むな酒が「日本酒」と「ウイスキー」の2つだからこそ、両者の共通点が強く感じられているということが読み取れますね。

こういう姿勢、嫌いじゃないです。
自分の経験に基づく独断と偏見、素晴らしいことじゃないでしょうか。
今後も、こんな調子で楽しくやっていきます。

<了>