人の見のこしたものを見るようにせよ。

すべての道は地理に通ず。

【ウイスキー1周年特集<序>】日本酒ファンの自分がウイスキーを飲み始めた理由

このブログをご覧頂いている方はお察しのことと思うが、自分はいわゆる「日本酒クラスタ」に属している。
日本酒を趣味とし始めててから約10年が経っており、それなりの本数を買ったり飲んだりしたことに加え、一時は好きが高じて酒関係の仕事をしていたこともある(現在はサラリーマンに復帰)。

そんな自分が、去年の7月から「ウイスキー」にハマり、ちょうど1年が経った。
最初は軽い気持ちで試してみたのだが、いまでは日本酒に次いで好きな酒になっており、もしかすると肩を並べる日がくるかもしれない。
そこで、以下の四回に分けて、この1年のウイスキー経験と現在考えていることを記録しておこうと思う。

  1. <序>日本酒ファンの自分がウイスキーを飲み始めた理由
  2. <前編>次々に覚醒する「アクワイアード・テイスト」
  3. <中編>「ブレンデッド」の「家飲み」から広がる世界
  4. <後編>日本酒から見たウイスキー、ウイスキーから見た日本酒

さっそく<序>を始めよう。

■「玉箒」のマスターとの出会い

自分がウイスキーに至る前の酒遍歴はだいたいこんな感じ。



もともと体質的にアルコールに弱いので、日本酒を好きになってからも、度数が高い蒸留酒に対して大きな苦手意識があった。
なかでもウイスキーは、アルコール度数が高いうえに独特のクセがあるので、正直言って「嫌い」だった。
なお、20代後半のころに、アメリカ音楽への憧れから一時期バーボンを嗜んではいたものの、格好をつけていただけで心の底から美味しいと思うことはなかった。

そんな思い込みを変えてくれたのは、新橋にある「玉箒」というバーだ。

玉箒

食べログ 玉箒


ここは「日本の酒の史料館」「大人の秘密基地」と銘打っており、あらゆる日本産の酒が揃っている。日本酒、焼酎、ビール、ウイスキー、ワイン、ジン、ウォッカ…等々、本当に選び切れないくらいの種類がある。
そして、日本産の酒と比較して楽しむための素材として、外国産の酒も相当な量を取り扱っている。

だが、玉箒の真骨頂はその先で、マスターの酒の飲ませ方、その背景として持っている歴史や文化に対する理解がもの凄い。
散々酒で遊び倒してきたが、まだまだ留まることを知らない。玉箒のマスターからは、そんなオーラがビシビシと放たれている。

それでいながら、お客さんに対して無駄なウンチクをたれることは一切無い。
常にお客さんの居心地の良さを最優先にしつつ、時々豊富な引き出しの中から、酒にまつわる興味深い話題を聞かせてくれたり、意外性のある飲み方の提案をしてくれる。

これ以上書くと玉箒の紹介記事になってしまうので、この辺りでやめておこう。
もっと知りたい方は、ライターさんがとても上手に書いている以下の記事をどうぞ。


■そして興味は「樽」へと向かう

閑話休題。ウイスキーにハマった経緯を書いていこう。
まず、一昨年に初めて訪れた玉箒で焼酎に開眼し、蒸留酒への苦手意識が無くなった(この辺りも書くと長くなるので大割愛)。

そんなある日のこと。久しぶりに顔を出した玉箒で、「ちょっと面白いのがあるので飲んでみますか?」と、深く褐色に色付いた蒸留酒を出してくれた。


これは「樽」への興味が芽生えた決定的瞬間だった。この日は樽熟成について根掘り葉掘り聞きまくった記憶がある。

以降、ジャンルを問わず樽熟成の酒を積極的に飲むようにした。




そして、玉箒のマスターが持っているのと同じミニ熟成樽を買って、自家樽熟成の実験を始めた。
ついでに、ちょうどその頃に目出度いことがあった酒友2名にプレゼントして、半ば強引に自家樽熟成の世界に巻き込んだ。

(参考)「天使のミニ樽」
※ 自分が買ったのは一番安いシルバーの1リットル。


なぜ自分がここまで「樽」に食いついたのか。
日本酒では「樽」がマイノリティなので、そこに「新鮮味」を感じたというのがまず一点あったと思う。
そしてもう一点、かつて「樽」は世界中のどこでも一般的だった(≒それしかなかった)が、近代化の中でそれを捨てなかった酒(ウイスキーやワイン)と、捨ててしまった酒(日本酒や焼酎)があることに、激しく「知的好奇心」を掻き立てられたのだ。

■こうしてウイスキーにたどり着いた

ここまで来れば、もう答えを書いたようなもんだろう。
自分に限らず、「樽熟成と言えばウイスキー」というイメージの人は、相当多いと思う。


そして、自宅から一番近い蒸留所(キリン富士御殿場蒸留所)のウイスキーを買ってみた。


振り返ってみると、自分のウイスキーへのアプローチは、完全に「頭でっかち」だったことが良く分かる。

そしてこの頃は、ウイスキーを本当に美味しく飲んでいたかどうか、甚だ怪しかったと思う。

ところがこの後、「アクワイアード・テイスト」に目覚め、ウイスキーの味わいに本格的に開眼することになるのだ。。。

<続>