人の見のこしたものを見るようにせよ。

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【ウイスキー1周年特集<前編>】 次々に覚醒する「アクワイアード・テイスト」

さて、ついにウイスキーを買って自宅で飲むようになってしまった、わっしーさん。
その後の初級者ならではの迷走っぷりと、少しずつ経験値が上がっていく(上がっているのか?)様子を、「アクワイアード・テイスト」という言葉を軸に書いていこう。

なお、まだ「序」を読んでいない方は、こちらからどうぞ。
【ウイスキー1周年特集<序>】日本酒ファンの自分がウイスキーを飲み始めた理由 - 人の見のこしたものを見るようにせよ。

■「アクワイアードテイスト」とはなんぞや?

Google検索で最上位に出てくるサイトから引用。

味覚には「経験値を重ねる事で好きになる臨界点」があり、その臨界点より前までは「おいしい」 と感じないタイプのものがあります。「アクワイアード・テイスト」 、 つまり 「後天的な味覚」 と言われるものです。子供の時、「大人はどうしてこんなものをおいしいっていうのだろう?」と思っていたのに、いつの間にか好きになった食べ物はありませんか?あれです。
出典 http://gochikai.com/enjoyment/275/

■後天的味覚その1:フルーティー(エステリー)

自分はフルーティー(エステリー)な日本酒がとても苦手だ。
また、バナナの香りがするビールも、どちらかと言えば苦手だ。
なので、きっとフルーティー(エステリー)な酒全般が苦手なのだろうと思い込んでいた。

ところが、樽熟成の酒を色々と飲んでいるうちに、「樽+エステルなら大丈夫なんじゃないか?」と思い始めた。

そしてウイスキーを飲んで完全に開眼した。



バナナの香り最高!!!
桃の香り最高!!!
南国フルーツの香り最高!!!
HAHAHAHAHAHA!!!

ついでにこんな実験もしてみた。

でも、フルーティーな日本酒は相変わらず苦手なのだ。何でやろ。。。

■後天的味覚その2:スモーキー

ウイスキーと言えば「スモーキーフレーバー」。
そして、スモーキーと言えば「アイラ島」。
そういう思い込みがあったので、近所で手に入る唯一のアイラモルト「ラフロイグ」の安いやつを買ってみた。

そして、会社の近くのシングルモルトが充実しているバーで、カリラ、ボウモア、アードベッグ、ラガヴーリンなどのアイラモルトを立て続けに飲んでみて、どれも「面白い」とは思ったものの、相変わらず「美味しい」とは思えなかった。

どうやらスモーキーなウイスキーはそれほど好きではないのかなー。。。と思っていたところに、意外なところから突破口が開けた。

「ティーチャーズ」はその辺のスーパーで1000円程度で手に入るお手軽ウイスキーだが、そこで始めて「スモーキー」がアクワイヤード・テイストになったと実感した。
これは、ティーチャーズのスモーキーさが控え目なこと、そして自宅でゆっくり繰り返し飲んだことが、効を奏したのだと思う。

それ以来、スモーキーフレーバーは「面白くて美味しい」ということで、抵抗無く飲めるようになった。
目下スモーキーなアイラモルトで一番気に入っているのは「カリラ」だ。

■後天的味覚その3:潮

ウイスキーが好きな人の話を聞いたり、ウイスキー関係の文章を読んでいると、味わいの表現として「潮」という言葉が良く出てくる。
最初は正直言って全く味覚では理解できず、ネットで検索すると、どうやら前出のアイラモルトは「スモーキーかつソルティ」であるらしい。

でも、当時はいま一つピンと来ていなかった。
うーむ、言われてみれば、どのアイラモルトも海藻のような香りがする。。。いや、海藻というよりヨードチンキか。。。

そんな頃に、あるバーで「潮っぽくて分かりやすいのください」と頼んだところ、「タリスカー」というウイスキーを出された。

香りの時点でもう「これが潮かも?」という予感があった。
そして、一口含んで「これが潮に違いない!」と確信した(合っているかはいまだに分からんが)。

その時に飲んだのはたぶんこれ↓

後から振り返ってみれば、アイラモルトは「潮」以外の要素も分厚いので、初心者かつ味覚が鈍い自分は、そこから「潮」を分離して感じられなかったのかもしれない。
それに対して「タリスカー」は、他の要素がシンプルなぶん、「潮」を感じやすいのだと思う。

そして、タリスカーが大好きになり、見事に「潮」がアクワイアード・テイストに仲間入りした。
いまバーで最も良く飲むシングルモルトは、 どこにでも置いてあり、お手頃価格で、味わいも好みの「タリスカー10年」だ。

■後天的味覚その4:ブレンデッドの良さ

さて、いよいよ最後。
これを味覚と言って良いかは微妙だが、いまの自分にとって重要なことなので、敢えて取り上げる。

スコッチ&アイリッシュウイスキーには、大きく以下の二種類がある。
「シングルモルト」: 一ヶ所の蒸留所で作ったモルト(発芽大麦)ウイスキーだけをブレンドしたもの
「ブレンデッド」:複数のシングルモルトにグレーン(大麦以外のとうもろこし等の穀物)を加えたもの
※あくまでも簡略化した説明

ウイスキーに興味を持って色々な情報を集めていると、ウイスキーファン/マニアの間に「シングルモルト至上主義」とでも言いたくなるような風潮があり、ブレンデッドウイスキーを下位に見る向きがあるように感じられた。

これは、日本酒で言うところの「純米酒原理主義」に近い。
そして、ブレンデッドウイスキーにおける「グレーンウイスキー」は、日本酒における「醸造アルコール」と立ち位置が近いのではないかと思っている。

実は、自分は、日本酒の中では「純米酒」が一番美味と感じているし、正直言ってこれからは「純米酒の時代」だとも思っている。
でも、往々にして「純米酒原理主義」の人々は、醸造アルコールを添加した日本酒について、「あんなのはインチキな酒だ」「本物の日本酒は純米酒だけだ」と言って、必要以上に貶める。
自分は「好きなものを世に広めるのためには、そのものの素晴らしさをアピールすれば良いのであって、嫌いなものを貶める必要は無い(むしろマイナス)。」だと思っている。
だから、純米酒は好きだが、純米酒原理主義の人とは仲良くなれない。

日本酒に関してそういう思いがあったので、ウイスキーについても、「シングルモルト」だけではなく「ブレンデッド」も積極的に飲んでみようと意識してきた。

そして、ブレンデッドにはブレンデッドの魅力があることに気づいた。それは一言で言えば「日常性」だ。

  • ①価格の日常性 : 原価が安いグレーンウイスキーが入っているため、低価格の者が多い。
  • ②味わいの日常性: ブレンドによって個性が緩和されており、「毎日飲める飽きのこない」味になっている。
  • ③購入の日常性 : 生産量・流通量が多いため、その辺のスーパーやコンビニで手に入ることが多い。

この「ブレンデッドの良さ」に気づいたきっかけとして、特に鮮烈な出来事があったという訳ではなく、「自然といつの間にか…」という感じだった。




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こうして、ウイスキーの様々な味の要素を経験し、本当に「美味しい」」と思って飲めるようになった。

最後に、ウイスキーとアクワイアード・テイストについては、下記の超名文がある。
このサイトに飛ばれてしまうと、誰も戻って来てくれなくなりそうなので、最後まで引っ張ったのだ。
onemore-glass-of-whisky.blogspot.com

次の中編では、ブレンデッドウイスキーの魅力について書いてみようと思う。
<続>