人の見のこしたものを見るようにせよ。

すべての道は地理に通ず。

魔窟・西川口で辺境中華を喰らう

日本三大中華街と言えば「横浜」「神戸」「長崎」。これくらいは常識だろう。これらは戦前にルーツを持つ歴史ある中国人コミュニティであり、今日では観光地としても広く親しまれている。ところが、これら以外に、近年になって中国人が集住することによって自然発生した新興中華街があるようだ。
その一つ、池袋の中華街については以前から耳にしていたが、他にも、西川口、川崎、木更津にもディープな中華街が形成されているらしい。

ところで、自分は小学校~高校までの期間を東京都町田市で過ごしており、横浜まで割と便利だったので、家族のお祝いは横浜の中華街に繰り出して食事を楽しむのが常であった。そういう環境で育ったため、中華料理、それも現地の味に近い本格的なものに非常に興味がある。
そんなわけで、いつ、どこに遠征して本格中華を腹いっぱい喰らうか。。。と思案していた頃に、ちょうど西川口について書かれた魅力的な記事に出会った。
zaikabou.hatenablog.com

西川口と言えば、いかがわしい風俗の街というイメージだったが、どうやら取り締りが強化され風俗店が激減し、その後釜として中国人が大量に転入し中華街が形成されているらしい、
これはボヤボヤしていないで西川口に行くしかない、と思いつつ、業務多忙のためさらに数ヶ月先延ばしになったが、2月中旬にようやく友人と総勢3名で勇んで夜の西川口に向かう。

京浜東北線の車内からして、既に中国系の乗客が結構目立つ。そして、西川口駅のホームを降りて改札に向かうと、体感ですれ違う人の半分が中国語を話している印象。ここは日本か?いったいどこの国やろか?
駅前をぶらぶら歩いていると、いきなり中国人向けのドリンクスタンドがあったり、アヒルの麻辣煮込みのテイクアウト店があったりと、ディープな中華街っぷりを見せつけられる。そして、脇道に入ると、明らかに風俗店の居抜きと思しき空間に中華料理店が見事にハマっている。横浜中華街のような観光地に来たというよりは、雑然として活気あふれる中国人の生活空間におじゃましている感じだ。

以下、入店してた店のことを記録しておく。

■「ザ・プライス西川口店」1階のイートイン【満州料理】

まずは、前出のブログで興味を持ったスーパーのイートインへと向かう。一般の食品売り場はどこにでもある感じだが、奥に行くと何かがおかしい。「東北特色砂鍋米線」って何だ。他にも訳の分からないメニューが張り出してある。うむ、いいぞ。
さっそくその「東北なんちゃら」をオーダーしてみたところ、日本語が良く通じない。おいおい、ここはスーパーのイートインのはずだが。。。食べてみると、米の麺が熱々のスープをよく吸い込んでおり、すこぶる旨い。友人が頼んだ水餃子も良かった。
大手スーパーの一角で、中国人の、中国人による、中国人のためのビジネスが息づいている。いきなり想像以上の風景を見せつけられた。

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■川味鴨頸王【四川料理】

スーパーから駅の方向へ戻ると、「麻辣湯」と書いてある店がやたらと目立つので、食べてみようということになった。友人の一人から「どうせなら一番入りにくい雰囲気の店を選ぼう」という提案があったので、明らかに水商売の居抜きと思われる「川味鴨頸王」の門を叩く。
ここもお店の人は日本語が片言で、麻辣湯を頼むと「辛さどうする?日本人あまり辛くしない方いいよ?」と提案されたが、せっかくの経験なので「現地の人と同じ一番辛いやつでお願い!」とオーダーする。麻辣湯は、具材はセルフで冷蔵庫から取り、それを預けて煮込んでもらうシステムで、なかなか面白い。
出来上がるまでの間に、ビールと鴨首の煮込みなどを頼んで待つことにしたが、この鴨首煮込みがむっちゃ辛い。しかも食べた数分後にピークを迎えるのが厄介だ。辛いのがやや苦手な友人はずっと「シーハーシーハー」と呼吸が苦しそうだった。
そして、とうとう念願の麻辣湯とご対面。辛いには辛いが、激辛というよりは「旨辛」の奥深い味だ。辛さはさほどでも無かったが、料理としての面白さと美味しさは期待以上だった。

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■火焔山【新疆料理】

三軒目は、新疆料理の「火焔山」へ。羊の塩茹で、米の麺が入った辛い煮込み、箸休めの茹でピーナッツをオーダー。既にかなりお腹一杯だったのだが、スパイシーだが酸味がある爽やかな味付けのおかげで、普通に平らげてしまった。羊の塩茹での臭みと独特のコク・酸味・辛味があるタレの組み合わせは、羊好きならハマること請け合いだろう。
隣のテーブルでは、オーナーの一族が賑やかに夕食を食べていた。こういう現地のレストランっぽい鷹揚な雰囲気も楽しい。次は池袋の支店にも行ってみるか。。。
同じ新疆料理でも、初台の「シルクロードタリム」はトルコ寄り、こちらの「火焔山」は中華寄りかなという印象を受けた。よう分からんけど。

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最後に、タモリ倶楽部で取り上げられた中華食材店で火鍋の素を買い、家路に着いた。
平日の仕事後で急ぎ足だったが、まだ風俗街のいかがわしさが残り、そこへ新たに中華系住民の暑苦しさが乗っかり、訳が分からないことになっている西川口の夜を楽しんで来た。まさに「中華圏の生活が生きている」という感じだ。
まだ行きたい場所が数軒あるので、近いうちに再訪することになりそうだ。

<了>